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GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)分析

参考資料「GPCの原理と測定結果(平均分子量)について」(PDF版)はこちら

GPCにより各種ポリマーの平均分子量ならびに分子量分布を測定します。
GPC(Gel Permeation Chromatographyゲル浸透クロマトグラフィー)は液体クロマトグラフィーの1種で高分子物質の分子量分布および平均分子量を求める手法です。最近では、分離機構からSEC法(Size Exclusion Chromatography;サイズ排除クロマトグラフィー)と総称されることも多くなりましたが、ここでは慣用的に使われるGPCで表記しています。
DJKでは常温GPCを用いて、有機溶媒に可溶な各種ポリマーの平均分子量および分子量分布を測定しています。

GPC測定で得られる情報 ・相対平均分子量(標準ポリマー換算分子量)
・分子量分布
測定対象 THF、CHCl3、DMF、HFIP等の有機溶媒可溶なポリマー・オリゴマー

一般に、結晶性ポリマーは溶媒に対する溶解性が低いため、GPC測定ではHFIPなどのフッ素系特殊溶媒を使用するか、もしくは高温で溶解性を高めて測定する必要があります。これに対して、非晶性ポリマーはスーパーエンプラを含めて、その多くが汎用溶媒(クロロホルム、DMF等)に溶解しますので、常温でのGPC測定が可能です。

測定可能なポリマー・オリゴマーの例注1)

溶離液 測定可能なポリマー・オリゴマーの例
THF 非晶性… ポリスチレン(PS), アクリル樹脂(PMMA), ポリ塩化ビニル(PVC), ポリ塩化ビニリデン(PVC), ポリカーボネート(PC), ポリスルホン(PSU)
熱硬化性(未硬化)…不飽和ポリエステル樹脂(UP),エポキシ樹脂,フェノール樹脂
CHCl3 非晶性… AS樹脂, ABS樹脂(可溶分のみ), ポリカーボネート(PC), 変性PPE, ポリアリレート(PAR)
結晶性… ポリ乳酸(PLA)
熱硬化性(未硬化)… エポキシ樹脂
DMF 非晶性… ポリエーテルスルホン(PESU), 可溶性ポリイミド(PI),ポリエーテルイミド(PEI), ポリビニルピロリドン(PVP), ポリアクリロニトリル(PAN),  熱可塑性ポリウレタン(TPU)
結晶性… ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
熱硬化性(未硬化)… フェノール樹脂, ユリア樹脂(尿素樹脂),メラミン樹脂
HFIP 結晶性… ポリエステル系樹脂(PET, PBT, PTT), ポリアミド(ナイロン/PA), ポリアセタール(POM), ポリビニルアルコール(PVA)
NMP ポリイミド前駆体(PI-Precursor),  ポリアミドイミド前駆体(PAI-Precursor)
(いずれも非晶性)
トルエン シリコーン系樹脂(ポリジメチルシロキサン等)(非晶性)
ポリビニルピロリドン(PVP)(非晶性)
ODCB注2) ポリエチレン(PE), ポリプロピレン(PP) (いずれも結晶性)
1-CN注2) 結晶性… 超高分子ポリエチレン, ポリフェニレンサルファイド(PPS), ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
CHCl3/PFP注2) 液晶ポリマー(LCP) (結晶性)

注1) 表に示したポリマーの溶解性は目安です。同じ樹脂種でも化学変性させたタイプや架橋構造を持つ場合は溶解性を示さないことがあります。測定に際しては予め溶解性を確認する必要があります。
注2) 外部委託となります(ODCB:オルソジクロロベンゼン,1-CN:1-クロロナフタレン,PFP:ペンタフルオロフェノール)

使用装置

・GPC専用機 … 東ソー製HLC- 8220( 2機)、Shodex製GPC-104( 1機)
・ビルドアップタイプ … Shodex製2機

東ソー製HLC- 8220                     Shodex製GPC-104

溶離液(カラム)と標準物質の組み合わせ

溶離液 カラム(Shodex)注) 標準物質 分子量範囲
(Log M)
THF KF806L (3)
KF-801 (1)
PS
PS
2~6
2~3
CHCl3 KF-405LHQ (3) PS 2~6
Toluene KF-804(2) PS 2~6
DMF
(LiBr 10 mmol/L)
KD-806M(2)+ KD802(1)
SB-806M HQ(2)
PEO、PEG、TEG
PS
2~6
HFIP
CF3COONa 5mmol/L
KF-404(2) PMMA 2~6

注)カッコ内はカラム連結本数

【参考】

●GPCの測定原理
図に示したように、多孔質の粒状ゲルが充填されたカラムに試料溶液を注入すると、分子サイズの大きいポリマーは細孔の深部に侵入できずに早くカラムを通過しますが、分子サイズの小さいポリマーは細孔の奥まで達する(浸透)ためカラム通過の時間が長くなります。したがって、分子サイズの大きいポリマーから順にカラム出口に到達することになります(サイズ排除機構)。

●得られる情報
カラムを出たポリマーの溶出量はRI(屈折率)やUVなどで検出し溶出曲線が求められます。これが得られる情報です。GPC分析では質量分析計のように直接、ポリマーの分子量を求めることは出来ませんので、以下の方法で溶出時間を分子量に置き換える必要があります。分子量への置き換えは、分子量分布が狭く分子量既知の標準ポリマー(異なる分子量のものを数点)を試料ポリマーと同じ条件で分析し溶出時間を求めます。溶出時間と分子量との関係を示すグラフ(検量線)を作成し、「標準ポリマー換算分子量」を算出します。
この「標準ポリマー換算分子量」は絶対分子量ではありません。前述したようにカラムを通過する際は「分子サイズ」で分離されますが、分子サイズは必ずしも分子量と一致しません。溶離液との親和性が高いポリマーはサイズが大きくなり、低い場合は小さくなります。また、極性基をもつポリマーもサイズは大きくなります。
試料ポリマーと同一構造の標準ポリマーを用いて検量線を作成すれば精度は向上しますが、現実的には難しいため、構造が異なる市販の標準ポリマー(PS, PMMA, PEO等)を使用し分子量に換算します。

【平均分子量について】
通常のポリマー合成では、生成あるいは分解の反応が確率的に進むため分子量に分布を持つようになります。
連鎖重合では、成長・連鎖移動・停止反応が1本1本の高分子鎖ごとに異なるため、様々な分子量を持った高分子鎖の混合物となります。逐次重合の場合も、化学平衡を伴う反応のため分子量分布が生じます。
平均分子量の算出は、「数平均・重量平均・Z平均」といった統計力学の概念に基づいて算出されますが、特に数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwが重要となります。
数平均分子量Mnは単純な分子1本あたりの分子量の平均で「本数分率(Хi)」をもとに計算されます。いっぽう、重量平均分子量Mwは「重量分率(ωi)」をもとに計算した平均分子量で、ポリマーの本数ではなく「重さ(分子量×本数)」を指標とした平均です。式で表すと次のようになります。
Mn = ΣMiNi/ΣNi
Mw = ΣMi2Ni/ΣMiNi
Mnは単なる平均なので理解し易いですが、Mwは普段このような平均を取らないので理解し難いかもしれません。一般論として、物性値はMnよりもMwに依存します。簡単な計算例を以下に示します。
例)分子量 10,000 が4本、分子量 5,000 が10本、分子量 1,000 が6本、計20本の平均分子量?
ΣNi=4 + 10 + 6 = 20(本)
ΣMiNi = 10,000 x 4(本) + 5,000 x 10 (本) + 1,000x 6 (本) = 96,000
ΣMi2Ni = 10,000 x {10,000 x 4(本)}+ 5,000 x{ 5,000 x 10 (本) }+ 1,000x {1,000 x 6(本)} =656,000,000
Mn = 96,000 / 20 =4,800
Mw = 656,000,000 /96,000 =6,833
Mw/Mn = 1.42

Mwを分かり易くするため、価値平均と考えて…
・10,000が4本の全分子量に占める比率 ⇒ 10,000×4/96,000=0.4167
これに分子量10,000を掛けて重みを付ける(価値化する) ⇒ 4,167
・同様に5,000が10本の価値 ⇒ (5,000×10/96,000=0.5208) ×5,000 = 2,604
・ 〃 1,000が5本の価値 ⇒ (1,000×6/96,000=0.0626) ×1,000 =62
合計 6,833