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示差走査熱量分析(DSC)

DSC (Differential Scanning Calorimeter,示差走査熱量測定) は、熱分析の主要な測定法のひとつで、原子・分子の集合体としての物質の熱的性質を測定する方法です。定義としては、「物質および基準物質の温度を調節されたプログラムに従って変化させながら、その物質と基準物質に対するエネルギー入力の差を温度の関数として測定する技法」です。
高分子材料にとって重要な解析手段であり、以下のような測定に利用されます。

・ガラス転移温度の測定
・融解等の相変化の測定
・結晶転移等の二次転移の測定
・反応熱、転移熱の定量
・比熱の測定

装置としては、入力補償型と熱流束型の2種類に大別されます。各々の原理を下記に示しますが、熱流束型DSCは、機構的にはDTA (Differential Thermal Analysis,示差熱分析)と明確な区別がないのに対し、入力補償型と熱流束型の区別は明確です。

入力補償型

入力補償型1        入力補償型2

サンプルとリファレンスを別々にヒーターで加熱し、それらが両者とも同じ温度になるように調節されます。この調節に要した熱量を測定します。

試料と基準物質をそれぞれ容器に入れてホルダーに設置し、両者を同時に一定速度で加熱又は冷却します。そして試料と基準物質の間の温度差をセンサーで検出し、この温度差がゼロになるように各ホルダー内のヒーターに電力を供給し、一定速度の加熱 (冷却) を続けます。単位時間あたり試料に供給される熱量と、基準物質に供給される熱量との差が、温度または時間の関数として記録されます。熱変化によって試料に吸熱が起こると試料側に、発熱が起こると基準物質側にヒーターを通して熱量が供給されます。

熱流束型

熱流束型1        熱流束型2

サンプルとリファレンスを同じヒートシンク(熱溜)で加熱し、試料が吸発熱したときに生じる温度差を測定します。

熱の良導体で作られたヒートシンク(熱溜)に、熱抵抗を介して試料および基準物資のホルダーが設置されます。ヒートシンク(熱溜)は、ヒーターにより温度コントロールされます。このヒートシンクの熱は試料側、基準物質側それぞれの熱抵抗を通じ、各ホルダーに載せられた容器内に伝えられます。これにより試料、基準物資がともに昇温(降温)します。各熱抵抗を通る熱流は、ヒートシンクと各ホルダーとの温度差に比例します。ヒートシンクは検体に比べて大きな熱容量を持つので、試料の熱変化による温度下降および上昇を吸収し、試料と基準物質を等しい温度に保持する作用をしています。従って、試料と基準物質に供給される熱量の差は、両ホルダーの温度差に比例します。熱量既知の物質で予め温度差と熱量の関係を求めておくと、温度差を検出することで、熱流束の差による信号をDSC信号に変換して取り出すことができます。

特長 弊社では、入力補償型、熱流束型、いずれのDSC装置も備えており、それぞれの装置の特長を活かした様々な熱分析測定を行っております。
装置 入力補償型 :パーキンエルマー社製 Diamond DSC
熱流束型 :SIIナノテクノロジー社製 EXSTAR DSC 7020
応用例 ガラス転移温度、結晶化温度、融点の測定、比熱測定、結晶化度測定、熱硬化挙動解析、純度測定、結晶化条件検討

 

測定例

急冷したPET

結晶化が不完全であり、アモルファス部分が多いため、
セカンドスキャンにおいて再結晶化のピークが顕著に現れる

急冷したPET
徐冷したPET

完全に結晶化したため、セカンドスキャンにおいて
再結晶化のピークが現れにくい

徐冷したPET

 

PETの測定例