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事業案内

イオンクロマトグラフィー(陰イオン分析)

高分子材料の含有元素分析

イオンクロマトグラフ(装置)を用いて、ゴム・プラスチック・繊維などの高分子材料に含まれる元素を分析します。

陰イオンクロマトグラフィー概要
装置(本体) 東ソー(株)製
イオンクロマトグラフ IC-8000EX型 + ES8100
(検出器:電気伝導度計)
カラム 東ソー(株)製
TSKgel SuperIC-Anion HS + TSKgel guardcolumn SuperIC-A HS
溶離液 東ソー(株)製
TSKgel eluent Conc.IC-A HS-10(炭酸系)
付属設備
(自動燃焼装置)
日東精工アナリテック(株)製 自動試料燃焼装置 AQF-2100H
必要試料量 固体…約1 g以上(溶出測定の場合はご相談ください)
液体…約20 mL以上
分析可能なイオン F、Cl、Br、NO2、NO3、PO43-、SO42-
※燃焼法…F、Cl、Br、SO42-

 

装置本体と連動した前処理システム(自動燃焼装置)の採用

DJKではイオンクロマトグラフ本体に連動させた燃焼システム(自動燃焼装置)を使用することで、前処理の再現性を高め、分析精度の向上を図っています(写真参照)。
燃焼装置内では試料を高温の酸素雰囲気下で燃焼させてガス化し、水に吸収させてからクロマトグラフ(本体)に導入するため、ハンドワークのフラスコ燃焼法などに比べて誤差の要因が低減され、疎水性ポリマー中の含有元素を精度良く分析することが可能です。

 

 

陰イオン混合標準液の測定例

陰イオン混合標準液の測定例
1.F(5 ppm), 2.Cl– (10 ppm), 3.NO2 (15 ppm), 4.Br (10 ppm), 5.NO3– (30 ppm), 6.PO43- (30 ppm),  7.SO42- (40 ppm)

測定事例

・固形エポキシ樹脂(未硬化)に含まれる全塩素量の測定
エピクロルヒドリンを用いて合成されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の全塩素量を測定しました。
電子材料(封止材)用途では、エポキシ樹脂に残存する加水分解性塩素が素子や部品の腐食原因となるため、
可能な限り、その低減化が図られています。
・試料:封止樹脂用固形エポキシ(クレゾールノボラック型)
・PBT製コネクター(ハウジング材)に含まれる総臭素量の測定
市販の製品から樹脂部分をサンプリングし、全自動燃焼法により前処理し総臭素量を測定しました。
その結果、臭素は検出されず、RoHS規制物質の臭素系難燃剤は使われていないことが確認できました。

なお、DJKはプラスチックに含有する臭素系難燃剤の定量分析(RoHS規制物質)に関して ISO/IEC 17025規格に基づく試験所認定(認定機関:JAB)を受けています。

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【参考1】イオンクロマトグラフィーの測定原理

イオンクロマトグラフィーは、水中の無機イオン測定のために開発された分析手法で、イオン交換樹脂に対する各イオンの吸着力の差を利用して分離・定量を行ないます。溶離液(移動相)中に注入された試料は、イオン交換樹脂を充填したカラム(固定相)によって分離されます。カラムから順次溶出してきたイオン成分は検出器(通常は電気伝導度)で検出されますが、その溶出時間で各成分の定性分析を行い、検出強度から定量分析を行います。

基本的なイオンクロマトグラフ(装置)は、移動相である溶離液を一定の流量で送る送液ポンプ、試料導入部、分離カラム、サプレッサー、検出器で構成されます(図参照)。

イオンクロマトグラフの構成

イオンクロマトグラフィーは水溶液中のイオン濃度を測定する分析法ですので、高分子材料をそのまま、装置に注入することはできません。適切な前処理が必要になります。
高分子材料のような固体試料の場合、電気炉やフラスコ中で燃焼させてガス状として水に吸収させるか、固体試料から直接、水に溶出させて測定します(下表参照)。

イオンクロマトグラフィーの前処理(例)
名称 プロセス 分析対象
水抽出法 試料を水中に浸漬し水に溶けだす成分(無機イオン)を抽出 溶出される無機イオン
燃焼法 試料を酸素中で燃焼させ、発生したガスを水に吸収、無機イオンとする (溶液捕集)。 燃焼した成分中の元素

高分子材料では、水抽出法は定量性に欠ける場合が多く、通常は燃焼法が採用されます。

【参考2】イオン交換分離の原理

イオン交換樹脂は、スチレンとジビニルベンゼンを懸濁重合させて作られます。ジビニルベンゼンが架橋剤となり3次元架橋した粒状ポリマーです。これにイオン交換機能を付与するため官能基が導入されます。
陰イオンであれば4級アンモニウム塩や3級アンモニウム塩、陽イオンであればスルホン酸基などです。

ここで、イオン交換樹脂は母体が持っているイオンではなく交換されるイオンによって分類されます。(図)

イオン交換分離の原理

【参考3】燃焼法イオンクロマトグラフィー(CIC)の測定原理

燃焼イオンクロマトグラフィーとは、固体試料中のハロゲン及び硫黄分を測定するために開発された分析方法の一つです。
ハロゲン及び硫黄を含む有機物を、900℃以上の酸素気流中にて燃焼分解することにより、
分解生成した気体を水溶液(吸収液)に吸収させ、吸収液をイオンクロマトグラフィーにて測定を行います。

燃焼法による試料中の元素の変化
試料中の元素 燃焼分解後の形態 水溶液中の形態
X(F, Cl, Br, I) HX,X2 X
S SOx SO42-
N NOx -(水に難溶)
P P2O5 -(不揮発性)
金属 金属酸化物 -(不揮発性)

 
自動燃焼前処理装置

参考文献
1)塚田 雄一, 日本分析機器工業会季刊誌, JAIMA SEASON 2014 Autumn, p.4
2)サーモフィッシャーサイエンティフィック㈱ 技術資料