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■カチオン重合
高分子を合成する重合反応は、その反応機構により連鎖重合と逐次重合に分類されます。
連鎖重合は、少量の開始剤から生じた活性種にモノマーが反応して新たに同類の活性種を生成し、この反応が連続的に起こりポリマーを生成するプロセスです。モノマー構造の違いから付加重合と開環重合に分類され、さらに活性種の違いにより、それぞれラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合に分類されます。
●連鎖重合…ラジカル重合、イオン重合(アニオン重合、カチオン重合)、開環重合、配位重合
●逐次重合…重縮合、重付加
このうち、カチオン重合は以下の特長がみられます。
●カチオン重合の特長
‣重合成長末端がカチオン(正電荷を持つ)のため、カップリング反応(再結合)は起こらない。
‣開始剤由来の対アニオン(カウンターアニオン)が存在し、成長反応に影響を及ぼす。
‣ラジカル重合、アニオン重合と同様「開始」、「成長」、「停止」、「連鎖移動」の4つの素反応があるが、活性種のカルボカチオンはアニオンに比べて高活性で不安定なため、通常の条件では連鎖移動が頻繁に起こる。
‣重合可能なモノマーがラジカル重合、アニオン重合とは異なる。カチオン重合ではモノマーの共鳴安定性(Q値)が反応性に大きく寄与せず、電子供与性の置換基を有するe値の小さい(-0.2以下)モノマーが重合しやすい。
カチオン重合は、アニオン重合と異なり活性種が高活性で重合制御は難しいことから、これまではリビング重合のような精密重合は困難で、副反応を抑制するため低温で重合する必要がありました。現状では、工業的な用途は限定されていますが、ラジカル重合やアニオン重合では重合しにくいモノマーに適用できるメリットがあり、重合制御に関する研究が進められています。
DJKでは、カチオン重合によるポリマー合成に関して下記の研究・試験業務を受託しています。
‣カチオン重合が可能な下記モノマーを対象とした重合実験をならびにラボスケールでの合成試作
‣文献のトレース、新規モノマーの重合性評価、コポリマー合成検討など
対象モノマー例 | ‣N-ビニルカルバゾール,ビニルエーテル類 ⇒(ヘテロ原子含有化合物) ‣スチレン誘導体,イソブテン(脂肪族不飽和炭化水素),ジエン類 ‣環状モノマー ⇒ 「開環重合」の項をご覧ください |
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開始剤系 | ‣触媒(活性化剤)… ハロゲン化金属(BF3,AlCl3,TiCl4,SnCl4,FeCl3),有機金属化合物(EtAlCl2,Et2AlCl,Et3Al) ‣開始剤(カチオン源)… プロトン酸,水,アルコール,ハロゲン化アルキル,エーテル |
重合方法 | ‣溶液重合 |
ポリマーの評価 | ‣ポリマー特性…分子量および分子量分布(GPC)、ガラス転移温度、結晶化温度、融点、軟化点、分解開始温度、溶融流動性 ‣材料物性…成形加工性、力学特性、光学特性、電気特性、耐久性、燃焼性、摩擦摩耗特性、ガス透過性 |
重合装置・付帯設備 | ‣ガラス製フラスコ(50mL~2000mL) ‣減圧重合真空ライン(油回転ポンプ,ピラニ真空計) ‣精密重合用高真空ライン(油回転ポンプ,拡散ポンプ) ‣グローブボックス ‣ドラフトチャンバー |